愛も希望も幸せも無い
universnow:~ urasorayuki$ love
bash: love: command not found
universnow:~ urasorayuki$ hope
bash: hope: command not found
universnow:~ urasorayuki$ happiness
bash: happiness: command not found
universnow:~ urasorayuki$ kill
kill: usage: kill [-s sigspec | -n signum | -sigspec] pid | jobspec … or kill -l [sigspec]
このくらいになると思い出す
姉が嫁に行った時の話。
その日は家に帰ると家がジタバタしていた。
珍しく親父が早く帰ってきていて、
母さんが家なのに化粧していたりなんかして。
見つかると有無を言わさず掃除をさせられた・・・。
18時過ぎくらいだっただろうか。
インターホンと共に、姉ちゃんの「ただいま~」の声。
それと共に若い男の「おじゃまします」の声。
なんていうか、悟ったね。
あぁ、これが噂に名高い「娘さんを・・・」の流れかって。
妙に落ち着いている自分と共に、
とてつもなく愕然としている自分に気がついたが、
気づかないフリをした。
僕も横に並んでいたけど、良く覚えていない。
張り詰めた空気と、
人の良さそうな若い男の緊張した顔。
いつもど通りの親父の貫禄。
母さんは忘れた。親父の向こう側だったし。
姉ちゃんの顔は、見られなかった。
親父がキレてその男を殴るとか、
男の土下座とか、ベタな展開は無く、
なんだか和やかに、厳かに、
この儀式みたいな「娘さんを嫁に・・・」は終わった。
一緒に夕ご飯食べたはずだけど、良く覚えていない。
一緒に笑っているんだけれども、笑っている気がしない。
心、ここに、あらず、ってこういう事か。と。
後で聞いたら親はもう知っていたらしく、
本当に儀式というか、ケジメみたいなものだったらしい。
姉ちゃん、なんで俺には教えてくれなかったんだよ。
そんな事、聞けないよな。
でも、聞いたんだぜ。
結婚式前日に。
親子水入らずの旅行は最期だからっていうんで、
親と姉ちゃんは温泉旅行に行ったんだ。
僕はおいてけぼり・・・orz
まぁバイト休めなかったし、野球もあったし。
だから親とはもういいって姉ちゃんが言って、
結婚式前日は一緒に遊びに行った。
手繋いだりしちゃって、一日色んなところフラフラして、
家に帰ってから、姉ちゃんの部屋で飲んだ。
明日式なんだから飲みすぎるなよって言ってんのに
どんどん飲みやがるバカ姉ちゃん。
でも、「姉ちゃんのぶん俺が飲むから」とか言って
ガブガブ飲んだ僕はもっとバカ。
熱いから窓開けたりして、
秋風がちょっと気持ち良かったりして、
色んな話をしたりして。
優しい姉ちゃんなんだよ。
男勝りで、部屋で人形で遊ぶよりも
外に出てフラフラするのが好きな姉ちゃんだった。
でもどこに行くにも絶対に僕の事を連れて行ってくれて。
いたずらして怒られる時はいっつもかばってくれて。
「クラスに好きな子いないの~?」「いねぇよっ!」
っていうベタな会話したりして。
自転車で西にどこまで行かれるかなんてバカやった時に
静岡入ったあたりで自転車壊れて、歩いて家まで帰った時に
親より泣いて、怒って、ぶん殴られて。
そんな話してたら、視界が滲んだ。
一度出るとね、もう止まらないの。
ボロボロボロボロ泣いちまって。
今更だけど、姉ちゃん、嫁に行っちゃやだよとか行ったりして。
でも姉ちゃんは、
「別にお嫁に行ったって、私達は姉弟でしょ」って。
姉ちゃんちょっと泣いてたけど。
何で俺にだけ教えてくれなかったんだよ。
「だって今みたいにボロボロ泣くと思ったから」
「泣かれたら、お嫁に行かれないような気がしてさ」
姉ちゃんだいぶ泣いてたけど。
姉ちゃん、俺姉ちゃんの事、凄く好きだったんだ。
変な意味じゃなくて、家族として、本当に。本当に。
姉ちゃんが家族じゃなくなるなんて、
朝起きて「おはよう」って言えなくなるなんて。
寝る前に「おやすみ」って言えなくなるなんて。
気づいたら朝でした。
姉ちゃんに蹴っ飛ばされて起きました。
姉ちゃんの部屋の床で。
姉ちゃんはもうパリッとした服着て、出かける準備万端。
もちろん親も。
準備があるから先に行くから早く勝手に来いだってさ。
くそ、頭いてぇ・・・。
シャワー浴びて、スーツ着て、
ネクタイはまだいいか・・・って家を出た。
式場着いたらもうなんか割りと人がいて、
入り口付近でうろうろしてたら会場の人が「ご親族の方ですか?」って。
良くわかりましたね。
「『居場所がなくてうろうろしているのがいたら弟です』って」
くそう。
新婦控え室に入ると、そこには、
ウェディングドレス姿の姉ちゃん。
昨晩一緒に飲んだくれてたのと同一人物とは思えない。
でも、悔しいから、
「まあまあじゃね?」とだけ言っておいた。
メイクどんくらい時間かかるの?とか、
ドレス着るのには?とか、
あんた朝ごはん食べてないでしょ、とか、
他愛も無い話。
姉ちゃん突然手を差し出す。
何?
「ネクタイ貸して」
多分最初で最期の、姉ちゃんに結んでもらうネクタイ。
二人とも何故か無口だった。
そろそろ時間なので、と、促がされて控え室を出る。
悔しいけど、出る時、
「姉ちゃん、きれいだ」って言った。
きっと笑ってくれたと思う。
僕は泣いたけど。ドア閉めた後。
教会みたいなところでの結婚式ってステキだな~。
もろもろ終わって、会食の時に、新郎に、
「姉ちゃん泣かしたら殴りに行くからな」って。
そうしたら抱きつかれて「約束する」って泣かれた。
つられて泣いた。
家族が一人減るんじゃなくて、一人増えたんだな。兄さんが。
最近は頻繁ではないけど、メールのやりとりしたり、
たまにウチに帰ってきたり、僕が遊びに行ったり。
「結婚する人出来たら一番に教えなさいよ」なんて姉ちゃんは言う。
誰が教えるもんか。僕だけのけ者だったくせに。
それでも多分、一番に言うんだろうな。
僕、姉いないけど。